論理思考 その6「課題を明確にする」

 C評価にしかならない小論文・レポートに「論点がない」ことがあります。
 「論点がないからC評価」ということではありません。論点がないために、「課題に対する考えが提示されない」「持論や一般論の羅列に過ぎない」ことがC評価の根拠となります。逆に言えば、論点さえ設定されていれば、A評価になるのに…という小論文・レポートも少なくありません。


1,論点の設定ができれば、小論文・レポートは半分完成
 与えられたテーマ・課題に対し、何を論点とするか。これを決めるのは大変です。
 高校生からのよくある質問に「どう書けばよいかわからない」「書き出しをどのようにすればよいかわからない」というのがあります。これに対する答えは、「論点を決めましょう」です。論点の提示から書き始めれば、論点に対する考えを示せるわけですから。
 では、論点を決めるにはどうすればよいかですね。
 これには「問いを繰り返せ」と返答します。大手企業の研修でも「WHY、もしくはHOWを最低5回繰り返してください」と伝えます。そして、実践してもらいます。
 ここでは、「ロジカルシンキング(照屋華子、岡田恵子)」p37の例を参考に述べます。


2、問いを繰り返す
 例題を「顧客からのクレームが多い」とします。
 これに対して、5回問いを繰り返すと以下のようになります。


 ①与えられた課題 「顧客からのクレームが多い」
  解決の方法   「クレームを減らせばよい」
 ◆繰り返される問い「どんなクレームなのか、なぜクレームが多いのか」
  ↓
 ②問いの具体化  「商品の故障よりも、対応への不満が多い」
  解決の方法   「顧客対応を改善せよ」
 ◆繰り返される問い「どんな対応をしているのか、なぜ対応に不満が多いのか」
  ↓
 ③問いの具体化  「販売員は、販売には熱心でも修理に対応に関心が弱い」
  解決の方法   「販売員の修理対応への意識を高める」
 ◆繰り返される問い「なぜ販売員は修理対応への意識が低いのか」
          「修理依頼に対して、どのような対応をしているのか」
  ↓
 ④問いの具体化  「優秀な営業員ほど修理対応をしたがらない。そのため、修理対応は
           営業成績のパッとしない人の吹き溜まりになっている」

  解決の方法   「優秀な営業マンに修理対応を動機づける」 
          「修理対応の担当者を変更する」
 ◆繰り返される問い「なぜ優秀な営業マンが修理対応をしたがらないのか」
  ↓
 ⑤問いの具体化  「新規販売台数のみが人事考課の対象になっている。
           顧客のリピート率、対応力などは評価の対象になっていない」

  解決の方法   「人事の評価方法を見直す」
          「修理対応を営業から切り離し、プロを育成する」



3,課題を絞り込む(問いを繰り返す)
 評価の低い小論文・レポートは、「顧客からのクレームが多い」に対して、「クレームを減らせばよい」と回答します。これが「Aができないなら、Aすればよい」という反転の発想です。これでは、評価に値しません。
 評価を高めるためには、問いを繰り返すことで課題を絞り込むことが必要です。例題の場合は、問いを5回繰り返すことで、クレーム要因が「顧客対応・修理対応が人事考課の対象になっていないこと」とわかりました。
 ここまで絞り込めば「論点」の設定ができます。
 課題:「顧客からのクレームが多い」
 論点:「顧客対応・修理対応が人事評価の対象になっていないからではないか」
 解決:「顧客対応・修理対応(リピート率)を販売実績と同等に近い評価とする」
    「修理対応部門の新設」


 そして、それぞれの効果・課題について検証まで言及してください。
 人事考課の対象にすると、給与体系の問題が発生します。販売と対応と評価バランスも重要です。修理部門新設となると組織の問題です。全社的な議論も必要になります。それぞれにコストがかかりますから、その検討も必要です。
 また、大きな企業であれば、どこかでクレームが少ない支店、クレーム対応がうまくいっている部署があるかもしれません。これらの先行事例を参考にすることも考えられます。


4,本日のまとめ
 ①与えられた課題に対し「論点」を設定する
 ②「論点」は、問いを繰り返すことで明確になる
 ③「解決の発想」は、その効果・課題の検証をわすれずに