論理思考 その9「本文の内容の縦軸×横軸」

1,出題の意図を読み取る
1)出題の意図は大きく二つあります。
 ①課題とした与えた要件に対する回答
 ②課題テーマに対する考察
 例題です。

◆企業レポート編

 管理職に求められる資質とはどのようなものであると考えるか。当社が抱えるさまざまな課題を考慮し、A4版で3枚程度でまとめること。


(2)まず、与えられた要件に回答します。例題の場合は2つです。
 ①管理職に求められる資質とはどのようなものか
 ②当社が抱える課題とは何か


(3)次に、課題テーマに対する考察を示します。
  例題の場合は以下のようになっています。
 ①課題テーマ 「管理職に求められる資質とは」
 ②テーマの前提「当社の抱える課題とは」
  
 「回答」と「考察」とは、別々に示すものではありません。回答を示しながら、課題テーマに対する考察を示すことが求められます。前項の言葉を借りると、「回答は、課題テーマに対する考察を示すための部品」とも言えます。
 課題テーマである「管理職に求められる資質とはどういうものか」を考察の中心となるように回答などの部品を組み立ててください。課題テーマに対する考察がないまま書くと、「与えられた要件の列挙に過ぎない」という評価になります。


2、本文の内容の縦軸×横軸
 論理とは、「縦軸×横軸」から成るものと考えるよいでしょう。
 出題の意図から本文の内容をどうするか考える時、この二つの軸を意識してください。
 「与えられた要件に対する回答×課題テーマに対する考察」です。
 この二つの軸を、「縦軸×横軸(X軸×Y軸)」としてイメージするのです。
 そして、二つの軸の接点が「主張・結論」、あるいは「論点」などになるはずです。この接点が、論理思考・課題テーマに対する考察の「起点」になると言ってもよいでしょう。


3,本日のまとめ
 ①小論文・レポートは、課題に対する「回答と考察」とから成る。
 ②与えられた要件に対する回答には、すべて回答すること。
 ③小論文・レポートの「本論」は、「課題テーマに対する考察」であること。

論理思考 その8「論理とは何か」

1,課題テーマに対する答えが明示されていること
 課題テーマに対する「自分の感想」を書く人も少なくありません。また、課題テーマに対する「持論」を述べる人もいます。そうではありません。
 論理的コミュニケーションでは、「課題テーマに対する答え」を提示するのです。
 「答え」は、以下の部品でできています。
 ①主張・結論
 ②根拠・理由
 ③方法・検証

 まず、上記の部品を揃えましょう。
 部品が揃ったら、「相手が納得するように組み立てる」ことに進んでください。
 部品は揃っていても、それが組み立てられることなく、羅列で終わってしまうレポートも少なくありません。「部品を組み立てること」が、論理思考を形成する重要な作業です。


2,部品を組み立てる時に意識するとよいこと
 「わかりにくいプレゼンの現場の空気」は決してよいものではありません。
 プレゼンが終わると、「結局どういうことなの?」「なぜそのようなことが言えるの?」という質問が飛んできます。
 部品を組み立てる時に意識するとよいのは、この2つの言葉です。部品を組み立てながら、「結局どういうことなのか」「なぜそのようなことが言えるのか」と自問自答するのです。そして、「ああ、こういうことか」「わかったそういうことか」と自分が納得できるような組み立てを模索するのです。自分の立てた結論・主張・問いに対し、「なるほどわかった」という状態になることがゴールです。


3,今日のまとめ
 ⑴課題テーマに対する答えは、3つの部品から成立する。
  ①主張・根拠
  ②根拠・理由
  ③方法・検証
 ⑵これらの部品を組み立てることで文章は完成する
 ⑶部品を組み立てる時に意識すべきことは2つある。
  ①相手が「なるほど、わかった」と納得することがゴールであること
  ②「①」の実現のためには以下の2つの言葉を自問自答するとよい
  ・「結局どういうことなのか」
  ・「なぜそのようなことが言えるのか」

評価されない小論文・レポートのパターン(コラム3)

 「コラム2」では、「論理思考の観点」から、評価されない小論文・レポートのパターンを述べました。
 今回も、「論理思考の観点」から、もう一つの評価されない小論文・レポートのパターンを述べます。


1,説明・考察に「ずれ」がある
 論点がずれている文章は意外と多いです。しかし、その「ずれ」に本人が気づいていないのです。たとえば、「医師の資質について述べよ」というテーマに対し、「日本医療の問題点、特に医療費の増大について」という論点を設定し、これについて述べるパターンです。
 また、研修レポートでは、「自社の課題をついて述べよ」というテーマに対し、「日本の少子高齢化」という論点を設定するパターンもあります。
 課題を絞り込む過程で、論点がずれてしまったのです。
 ただ、本人の中では、以下のように考えられているようです。
 医師の資質の一つに、「日本の医療費増大という課題を解決すること」がある
 この考えのずれがどこにあるか。
 医療費に関する課題解決は医師の「役割」に含まれます。しかし、「資質」ではありません。このずれが致命傷になります。


 同様に、「日本の少子高齢化」が、「現場の人手不足」という自社の課題の原因であるという主張もあります。本人の中ではつながっているのです。
 しかし、現場の人手不足の解決は「採用」「業務の合理化」で進めるものではないでしょうか。もし、「日本の少子高齢化」を論点とするならば、少子化の解決・高齢化社会の問題解決についての考察を示すレポートになるはずです。


2,説明・考察に「漏れ」がある
 ここまで述べてきた例でいえば、以下のパターンです
 ①「実践・検証」がない(仮説のまま)
 ②「判断の基準」が示されていない(客観性の不足)
 ③「メリット・デメリット」の考察・整理がない(リスクの検証がない)
 このような小論文・レポートで、相手を納得させること、高い評価を得ることは難しいです。一つの漏れで、すべてが失われるのです。


3,説明・考察に「重複」がある
 たとえば、3つの提案が示されているとします。
 しかし、3つをよく読むと、「A案とC案とは同じことを言葉を換えて表現しているだけ」「A案はC案を反転させただけ」ということはよくあります。
 これは、書き手の頭の混乱を示しています。
 3つの提案をするならば、「3つの切り口」が示されるはずです。しかし、A案とC案とは「同じ切り口」ということです。これは、信憑性・信頼性を損なうといえるでしょう。


4,本日のまとめ
 説明・考察に以下のような問題があると、それだけでC評価になる
 ①「ずれ」(論点が適切に設定されていない)
 ②「漏れ」(一つでも読み手に指摘されると、すべてが否定される)
 ③「重複」(考察の混乱が伝わるため、すべての信頼・信憑性が損なわれる)