そして、出題条件の確認(その2「出題意図を理解する」)

 下の例題について、前回は「文字数」について考察しました。
 今回は、「出題意図」という視点から考察します。
 まず、例題をご覧ください。


【例題】
⑴企業レポート
 管理職に求められる資質とはどのようなものであると考えるか。当社が抱えるさまざまな課題を考慮し、A4版で3枚程度でまとめること。


⑵大学入試の小論文
 医師に求められる資質とはどのようなものであると考えるか。今日の社会が抱えるさまざまな課題を考慮し、600字以内で答えよ。


1、よくある低評価パターン
⑴A~Cの3段階で「C評価」になる文章
 以下のような文章は、書式・表記が正しく、論理性・独自性・創造性が高い考察が示されていても「C評価」です。 
 ①「資質」のみを掘り下げて書いている。
 ②「課題」についてしか取り上げていない。
 ③「役職者とは」「医師とは」について持論を述べることに終始する。


⑵この3つのパターンがなぜ「C評価」になるのか
 出題意図を理解していないからです。
 言葉を換えれば「課題として与えられた条件に答えていない」ということです。
 小論文・レポートでは、「課題として与えられた条件には、すべて回答すること」が前提です。しかし、3つのパターンは、与えられた条件のすべてに回答していません。
 課題として与えられた条件を切り取った文章なのです。これは、C評価しかできません。


2,課題として与えられた条件にはすべて答える
 まず、課題を分析しましょう。そして、与えられた条件にすべて答えるのです。
⑴課題は、「中心となる問い」と「その前提」からできている
 ①中心となる問い
 ・役職者・医師に求められる資質とはどのようなものか
 ②問いの前提
 ・当社の課題・社会課題と結びつけて回答すること
 ・役職者・医師の定義を明示すること


⑵前提と中心となる問いとの「むすびつき」が重要
 「例題」から出題の意図を類推してください。
 「例題」では、課題と結びつけた考察が求められています。ここから考えられるのは、「社会問題への関心があるか」「貢献的な発想を持っているか」ということです。「役職者・医師になりたい」という熱意を訴えることは求められていません。試されているのは、「役職者・医師として、世の中や人々に役に立つという発想があるかどうか」です。
 このストライクゾーンに投げ込むことが評価を高めます。


⑶「課題発見とその解決」の力も求められている
 重要なのは「課題の設定」です。
 課題を見つけるために必要な、「観察力」「分析力」「先入観から離れて思考する力」などを身に付けているかが試されています。そういうことを、日々意識しているか、思考習慣として身についているかが、ここでわかります。
 また、課題が適切に設定されていれば、課題から解決への考察・説明の流れもよくなります。そのことで、評価も高まります。


3,本日のまとめ
 ①出題意図を理解し、与えられた条件にはすべて回答する。
 ②課題は「中心となる問い」と「その前提」とからできている。
 ③「自分の希望や思いを述べること」は求められていない。
  小論文・レポートでは、「自己の客観的な思考力」が試されている。