論理的な考察・説明のために(その1,研修レポート編)

 ロジカルシンキングという言葉があります。
 小論文・レポートで求められていることの一つは「論理性」です。では、「論理的に思考する」とはどういうことか、どうすればよいか、以下の例題から考えてみましょう。

【例題・企業レポート】

 管理職に求められる資質とはどのようなものであると考えるか。当社が抱えるさまざまな課題を考慮し、A4版で3枚程度でまとめること。



1,「努力宣言」で終わる小論文・レポートは、論理的ではない
⑴評価の低い文章によくある「結論」

 以上、ここまで自分なりに管理職としての資質について述べてきた。今後は、管理職として必要な資質を意識し、それが身につくように努力したいと考える。

 この結論の何がいけないか、おわかりでしょうか。
 小論文・レポートは、与えられた課題について考察し、その結論を示すものです。
 これを「面接」に置き換えると以下のようになります。
 面接官「管理職の資質とは、どのようなものだと考えていますか」
 受験生「管理職としての資質が身につくように努力したいと考えています」

 この受験生は、コミュニケーション能力に問題を抱えているようです…。


⑵「努力宣言」で終わるレポートに対する評価
 
小論文・レポートは、与えられた課題についての考察とその結論を示すものです。
 したがって、「これから努力します(結論)」と
回答することは、「与えられた課題を理解していない」という評価になります。
 プレゼンでも「プレゼンターの精神論・理想論・価値観」が前面に出てしまうことがあります。そのため、「商品の魅力」「課題とその解決の提案」が伝わらず、コンペでは議論の対象になることもなく落選になるケースもあります。なぜならば、「与えられた課題を理解していない(論理的考察力がない)」からです。


2,与えられた課題の理解が「論理思考のはじまり」である
⑴例題から考えてみましょう。

 ①与えられた課題を確認する
  「管理職としての資質とはどのようなものか」という問いです。
 ②キーワードの定義を確認する

  「管理者」の定義を確認します。
  マネジャー・管理者などの言葉が浮かびます。反対語は、プレーヤー・実務者です。
 ③キーワードについて知識を得る
  マネジャー、マネジメントとは何かを学ぶ。文献・書籍などからですね。
 ④なぜ「資質」が問われているかを考える
  「名プレーヤー、必ずしも名監督とはならず」という言葉があります。
  マネジャーには、プレーヤーとは異なる資質が必要なのかもしれません。

 ⑤出題の意図は何か(俯瞰的にとらえ直す)
  「組織・チームのマネジメントを任せられる人材なのか」が試されています。
  なぜなら、そういう立場・役職に就くことを期待されているからです。


⑵「管理職としての資質とはどのようなものか」という問いに、どのように回答するか
 ①ヒントは、課題文の中にある
  課題文には「当社が抱えるさまざまな課題を考慮し」とあります。
  なぜこのような「条件」を課したのでしょうか。
 ②組織は「従来型のマネジメント」の改善を求めている
  時代や価値観が変化しています。この変化にあわせて組織も変化が求められています。
  「当社が抱える課題」とは、従来型のマネジメントの限界のことと考えられます。
  つまり、従来型マネジメントの改善や、新しいマネジメントの創出が必要なのです。
 ③「管理者としての資質」として求められているのは
  当社が抱える課題に気づき、その解決を導く発想・考察(回答)です。
  そういうレポートに高い評価がつきます。 


⑶与えられた課題を理解しない人はどのようなレポートを書くか
 ①管理職としての資質について、持論を述べる  (個人の理想論)
 ②マネジメントについての一般論を説明する   (誰でも知っている知識の羅列)
 ③従来型マネジメントの長所だけを肯定的に述べる(課題の提示がない)
 つまり、「当社が抱える課題に気づかず、解決も導かれていないレポート」ですね。
 評価は、「論理性がない=管理職の資質に欠ける」になります。 


3,本日のまとめ「論理的に思考するとは」
 ①「与えられた課題」の意図を理解すること
 ②「課題の意図」に基づいた回答を相手に返すこと
 ③「①②」のようなコミュニケーション・キャッチボールができること