そして、出題条件の確認(その1「文字数を守る」)

 今日は、まず「例題」を提示します。


【例題】
⑴企業レポート
 管理職に求められる資質とはどのようなものであると考えるか。当社が抱えるさまざまな課題を考慮し、A4版で3枚程度でまとめること。


⑵大学入試の小論文
 医師に求められる資質とはどのようなものであると考えるか。今日の社会が抱えるさまざまな課題を考慮し、600字以内で答えよ。


1,小論文・レポートで最も注意すべきこと
 小論文・レポートの難しさは、「0点(評価対象外)」という評価があることです。
 「0点(評価対象外)」になるのは大きく2つです。
 ①白紙・未完成
 ②出題条件から外れている。出題条件に回答していない。
 気をつけるのは「②」です。
 書式・表記の原則を満たし、すぐれた考察が示されていても「0点」になる時があるからです。それは「出題条件から外れている」「出題条件に回答していない」と評価された時です。


2,出題条件を満たす(文字数)
 「書式」「表記」「文字数」になります。「書式」「表記」についてはすでに述べています。ここでは「文字数」について確認しましょう。

 A4版で3枚程度にまとめるとはどういうことか

 ⑴A4版の書式は「40字×30~40行」で設定される
 ①文字数に換算すると、1枚「1200~1600字」となる
 ②3枚程度を文字数に換算すると、「3600字~4800字程度」となる。
 ③「程度」という場合、指定文字数の「±10%」が目安となる。


 ⑵「⑴」の内容に基づくと以下のようになる
 ※A4版1枚の文字数・行数に厳密な指定がない場合
 ①文字数で換算すると、3300字~5200字になる。
 ②「①」の範囲内の字数で書き上げ、それが3枚に収まる行数を設定する。
  ただし、行数は「Wordの標準設定」「30行」「40行」のいずれかを選択する。
  
 ⑶採点対象外になるレポート
 ①A4版で3枚に達していない。もしくは、4枚以上になっている。
 ②A4版で3枚にはなっているが、「字数×行数」の設定を変更しており
  文字数で3300字に達していない。もしくは5200字以上になっている。
 

 600字以内とはどういうことか

 ⑴数学的な正しさと、小論文の意図とは異なる
 ①数学的な正しさは、0~600字ということ。
  ただし、この解釈では「0文字(白紙)」でもよいことになってしまう。
 ②小論文の場合、指定文字数の「±10%」が目安。
  ただし、「以内」という指定のため「540~600字」が採点対象となる。


 ⑵減点となる例
 ①「540~600字」で書かれていない(採点対象外になる可能性が高い)
 ②600字の意図は、「主張・結論」に対し「原因・理由」「根拠」まで示せということ。
  したがって、主張・結論だけしか述べていない文章は、大きく減点される。


3,本日のまとめ
 小学校や中学校時代、感想文、作文、レポートなどをどのように提出していましたか。
 枚数・字数が不足していても、提出すれば提出点がつくと考えていませんでしたか。
 枚数・字数を稼ぐために、思いついたことを全部書いてはいませんでしたか。
 枚数・字数が不足していても「~以内だから問題ない」と強弁していませんでしたか。
 それは、企業・大学では「採点対象外」です。
 以上、今日のまとめでした。


 次回は「出題条件に回答する」です。

次に、表記の原則(原稿用紙の使い方に準じること)

 小論文・レポートの表記について、最近、顕著な傾向があります。
 それは、「インターネット記事」「SNS・ブログ」などに特有の文体・表記で書かれた文章が増えてきたことです。
 小論文・レポートは、いわゆる「原稿用紙の使い方」に準じて表記してください。


1,ネットニュースの文章例

高校入試の在り方について検討してきた委員会が、2025年から推薦入試を生徒自身の推薦による「特色入試」とすることなど改善点を求め、県教育委員会に提言書を提出しました。



9月22日は、大学や高校産業界などで構成された検討委員会の代表が県の教育長に提言書を手渡しました。


提言書によりますと、一般入試は学力検査と調査書の配分を各高校が決められるほか、面接は必要に応じて行うとしています。

また推薦入試は校外活動も評価対象とし、生徒自身の推薦を認め、名称を「特色入試」に改めました。

また一般入試と特色入試の日程を3月上旬に統一するとしています。



県教委では、2022年度内に方針を決め、2023年度から周知を図るということです。

 これは、インターネット記事、SNS・ブログに特有の表記の例です。
 したがって、小論文・レポートで、このような表記すると評価が下がります。
 減点ポイントは、以下のとおりです。
 ①「敬体(~です・~ます)」で書かれている
  ・小論文・レポートは「常体(~だ。~である)」で表記します。
 ②段落の冒頭が一文字あいていない(すべて左詰めで書かれている)
  ・小論文・レポートは「原稿用紙の使い方」に準じて表記します。
 ③一文ごとに改行している。一文一段落になっている。
  ・改行や段落の基準は「内容」です。
 ④不要な行間(空行)がある
  ・行間を一行あけるのは、大きな段落の前のみでよい
 ⑤数字や英字が「全角」で表記されている
  ・数字や英字は「半角」で表記します。
 3段階評価(A~C)ならば、「C評価」になる
  ・文章全体に表記の誤りが見られるからです。


2,修正例

 高校入試のあり方について検討してきた委員会が、2025年から実施する推薦入試について、県教育委員会に意見書を提出した。意見書で示された提案は、大きく3つにわけられる。

⑴推薦入試について

 ①名称を「特色入試」に改める

 ②「生徒自身の推薦」も可能とする

 ③「郊外活動」も評価対象とする

⑵一般入試について

 ①「学力検査と調査書の配分」は各高校が決める

 ②「面接」は必要に応じて行う

⑶入試日程について

 ①一般入試と特色入試の日程を「3月上旬に統一」する

 これに対し、県教育委員会は、2022年度内に方針を決め、2023年度から周知を図るという回答を示している。

 修正ポイントは以下のとおりです。
  ①表記を「原稿用紙の使い方」に準じたものとした。
  ②文体を「常体(~だ、~である)」で統一した。
  ③事実は「見出し・箇条書き」を活用して明示した。



3,小論文・レポートの「表記」の確認
⑴文末表現は「常体」で統一する
・「~だ、~である」で統一する。
・最悪なのは、常体と敬体とが混じっていることです。
⑵「書き言葉」で表記する
・例)×ので→〇から、×でも→〇だか、×なので→〇したがって
⑶「~感じる、~思う」はできるだけ避ける
・主観的な言葉は使わない方がよいです。
・「~考える」「断定的に言い切る」ことを意識してください。
⑷「原稿用紙の使い方」に準じて表記する
①段落の冒頭は一文字あける。
②数字・英字は「半角」で表記する。
③空行は、「大きな段落の前(大見出しの前)」のみでよい
・3段落構成ならば、空行は「序論と本論の間」「本論と結論の間」のみでよい。
 段落内の空行は、原則として不要。


4,本日のまとめ
⑴以下の3つの原則を意識してください。それだけで表記は改善できます。
 ①「原稿用紙の使い方」に準じて表記する
 ②「常体」「書き言葉」で表記する
 ③「~考える」「断定的に言い切る」ことを意識する


⑵「見出し・箇条書きの工夫」をすることで評価を高めましょう。
 ・読み手に「視覚的なわかりやすさ」を提供するのです。
 ・「見出し・箇条書きの表記」は以下が原則です。
  「1,大見出し~⑴中見出し~①小見出し・箇条書き」

まず、書式の設定

 小論文やレポートの提出も、原稿用紙などの「紙(ペーパー)」での提出から、データでの提出に変わっています。
 今回は、「Word」での提出を例に「書式設定」を確認します。
 具体的には、「字数×行数」「フォント」「フォントサイズ」などです。


1,評価が低くなる小論文・レポート

⑴指定された書式(フォーマット・テンプレート)を守っていない

 厳密に言えば「提出条件を守っていない」という評価になります。
 その場合、「採点対象外」になります。

⑵自分で書式を変更してしまう

 レポート課題が「Wordの文書」で送られてくる場合があります。
 レポート課題、課題の説明、提出期限などの説明があり、その下に「ここから書き始めてください。」「以下に、本文を記してください。」と指示が記されている場合があります。
 その場合、「そのままの書式」で記してください。
 「字数×行数、フォント、フォントサイズなどの設定」を変更してはいけません。

⑶以下のようなレポートが、実際にあります

 ①フォントが「ゴシック」「メイリオ」などに変更されている
 ②提出条件が「A4版3枚程度」と指定されている場合
  ・1ページを「35字×20行」で設定する
  ・フォントサイズを12ポイントにする
  (目的は、説明せずともご理解いただけると思います)


2,小論文・レポートの標準的な書式
 特に指定がない場合は、以下の設定が標準と考えられます。

⑴Wordの標準設定

⑵ワードの標準設定以外の場合

 ①文字サイズ  10.5ポイント
 ②文字フォント 明朝体
 ③余白     上・下 20mm
                                左・右 15mm
 ④字数・行数  40字 × 30~40行
 ※特に「プリントアウトが想定される場合」に有効です。

⑶見出しなど

 ①タイトル、大見出し 14~16ポイント
 ②中見出し、小見出し 11~12ポイント
 ※見出しはフォントサイズを変えなければならないという意味ではありません。
  フォントサイズをどうすればよいかは、「読み手の見やすさ、わかりやすさ」という
  視点から判断するのがよいでしょう。 


3,大切なことは

⑴自分の思い込みで書式を設定しない方がよい 

 「指定がなかったから」という声をよく聞きますが、「指定がない=自由でよい」と考えるのは危険です。
 「指定がない」ということは、「指定するまでもない」ということです。つまり、「2」で示したような「標準的な書式」という前提の理解が試されていると言ってもよいでしょう。また、心優しい人、プレゼン資料作成に長けている人ほど、「明朝以外の書式(特に、メイリオ)」を使う傾向もあります。「明朝よりも見やすいフォントを」という心遣いのようです。

⑵評価者の立場から

 個人的には、明朝より見やすいフォントでの提出が認められるようになってほしいと考えています。しかし、1日で100名分近いレポートを読み、評価する立場から言えば、「レポートごとにフォントが異なる」と、とても読みにくいです。つまり、「公平・公正な評価をするためには、全員の書式が統一されていること」がとても重要な条件なのです。

⑶書式の確認を習慣づける

 企業研修でレポートを課される場合、大学入試で小論文・志望理由書がある場合、「書式について確認」してください。企業研修ならば、研修時に質問できるはずです。大学入試の場合は、願書で確認する。それでも不安な場合は、大学説明会などで質問するなどの策を講じてください。
 「書式の確認」は、実はとても重要です。
 社内文書、公文書、メール、メモ、報告書、実験レポートなど、これから多様な文書作成が待っています。それぞれに「共通のルール」と、「独自のルール」とがあります。
 これらを「使い分けること」「使いこなすこと」が、あなたの「評価」を高めるのです。